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まったくー、パパは意外と神経が細かい、と感じるのはこういう時だ。
彼は、時差ぼけとパリに来た興奮のため、夜中の2時半に起きてしまった。無視して眠り続けるが、ため息をついたり、しょっちゅうごそごそしているので、ワタシまで5時半に起きるはめになってしまった。
5時半のパリは暗い。そして6月といっても結構寒くて雨模様だっため、散歩に出る気にはなれない。ワタシは仕方なく、健康法である気功体操などをして、パパは狭いホテルの部屋と華麗な気功のポーズを決める妻のまわりをウロウロして、やっと7時になる。
そして、いっつもそればっか着てると言われているオリーブグリーンのハーフトレンチを着込んで、外に出る。
その足で、パン屋の「ポワラーヌ」へ。お店に入った途端、おばさんに、焼き立てのサブレをもらった。「うれちーい。」と喜んで、大好きなタルト・オ・ポムとフランを買う。
本当は、あのでっかいミッシュという丸いパン・ド・カンパーニュっぽいパンも欲しいけど、それは我慢しておく。以前は、レストランで出るパンといえば、バ
ゲットという細目のフランスパンばかりだったのが、最近では、パン・ド・カンパーニュも増えて、カフェやレストランでも、「当店のパンはポワラーヌのパン
です。」と貼り出している店も多いから、また食べられる機会もあるんじゃないかと期待しつつ…店を出た。
近くのカフェに入り、カフェオレを注文して、さっそく紙の包みをあける。
タルト・オ・ポムは、文句のつけようがない。強いて言えば、ちょっとりんごが少ないかな…季節的に苦しいのかな…ぐらい。パイ生地のさくさくとりんご、ちらほらするバニラ・シュガー。「あたしはそっけないわよ。でもあなたはあたしのこと好きでしょ…」って言われてるような気がする。
おまけで買ったフランだけど…実はワタシはフランがちょっと苦手だ。でも、でも、もしか、ポワラーヌちゃんのフランだったら…と淡い期待を抱いて、ちょっと買ってみた。
結果、フランはやっぱ、フラン。モチモチプリンだ…。
そのあと、ぶらぶら、サンジェルマン・デプレを歩きつつ、「クリスチャン・コンスタン」へ。
朝、あまりにも早いため、買いたかったお菓子はなかった。
で、おばさんのお勧め、かなり塩気のつよいパート・サレにチーズのアパレイユをのせて焼いたガトー・フロマージュと、上にオーソドックスなメレンゲの軽く焼き目をつけたタルト・シトロン、そして、小さな小さなフィナンシェをいくつか買った。
ワタシはフランスに行くと絶対食べると決めているのが、タルト・シトロンだ。日本で自分で作っても、どこかで買っても、なかなかフランスのタルト・シト
ロンのような、すっきりした酸味のタルトには出会えない。決定的にレモンが違うのだ。かなり砂糖を効かせているはずなのに、けっしてしつこくない。日本の
タルトで、こんな風にメレンゲをのっけたりしたら、もうそれだけで、ゲホゲホになると思う。
これらのお菓子を、朝の寒いリュクサンブール公園のベンチで頬張りながら、
「だんだん、苦しくなってきた…」と告白すると、
「なんだ、おまえの実力はそのくらいのもんだったのか。もうギブアップか。」とあおるパパの声が聞こえる。だが、ここで挑発にのったら、あとが苦しくなる、と思いこの辺で食べるのを切り上げ、リュクサンブール公園をひさしぶりに散歩してみる。
「なつかしいな〜」と、盛んにむかしをなつかしむ男と、「この公園って、むかしから象のにおいしない?」と、鼻をくんくんさせて歩くその妻。
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このあと、サン・ミッシェルの料理本専門店、「リブレリー・グルマンド」で、本を探す。お店のおばさんが、「どんな本を探しているの?」と聞いてくれたので、「地方菓子の本と、焼き菓子の本、サガシテイマース。」と言ったら、何冊か出してきてくれた。それをいろいろ悩んだすえ、数冊購入。
昼食はちょっとまだ苦しかったのでパスして、レ・アールの道具屋街へ。
「ドゥイルラン」、「モラ」、「アー・シモン」と、あちこちのぞく。
特にワタシは「モラ」が大好きだ。キャー!すごいすごい、を連発しながら、お菓子の型のコーナーに張りついていろいろ見ているのは、至福の時間だ。
マトファーの道具が日本の半額以下で購入できる。うれしくて、うれしくて、いろんなものを買った。
このことが後にパパの運命を大きく狂わせることになろうとは…そのとき誰が知り得ただろうか?
このあと、「ジェラール・ミュロ」さ行って、ルバーブのクラフティ、バルケット・オ・マロンとほうれん草のキッシュ、ヌガーのマカロンを買いこんでいたら、ミュロさんがひょこっと出てきた。
「いやー、ちゃんと有名になっても現場でやってんのね。」と感心する。
そして、いったんホテルに帰って荷物を置き、夕飯を食べるビストロを決める。
その夜決めたお店は、友達のヒャクちゃんに教わった、鍋マーク3つの、ブルターニュ料理の「シェ・ミッシェル」。
雨の中、ブーブー言いつつ、地下鉄を乗り換え、8時に到着。
またまたパパは、前菜に鴨のコンフィとそば粉のクレープ、コルニションという小さなピクルスとバターが、どんと添えてあり、あまりのすごさに一瞬絶句。メインは、これも肉食獣のパパが主食としている子羊のグリル。肉の上に、どんとサラダ、そしてジャガイモとニンニクのグリルが鼻をくすぐる。
ワタシは、オマールの冷たいスープ。おねえさんが、キュウリとシブレットのいっぱい入ったスープ皿を持ってきてくれて、中に海老スープをとろとろといれてくれる。
「もっと入れる?」「ウーン…」「じゃ、もっと欲しかったら言って。おかわり持ってくるからね。」と言って去って行く。メインは黒鯛のラタトィユ添え。これもうまかった!
デザートは、パパはチーズの盛り合わせ。ワタシはクイニーアマン。
「これもいけますぜ、だんな。フランスの粉の味がはっきりでていて、まわりのパートが、カリッとしているというより、ガリッとしっかりしてて、なかはモチモチ。日本で食べるとべとべとしがちなお菓子だけど、まさにママンの味ですな。」
「チミの説明は擬音ばっかりでわからんのだよ。」
と、パパがご機嫌でワタシの大切なクイニーアマンを口に放り込む。
ビストロガイドではお鍋三つ。ワタシもお鍋三つあげたい。やっぱ、フランス料理はこんなんが好きだ。
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