お菓子の助っ人
フレキシパン
flexipan
初めてフレキシパンを目にしたのは、私がまだ製菓学校に通っていた時。

先生が、「これは型にバターをぬらないで、そのまま生地を流し込んで焼いて、そのまま冷凍庫にも入る、すごい型なんだよ」と言って、黒い小さなフレキシパンを作業台の上に置きました。
その中にクレームブリュレの種を流し込み、ササッと焼いて、またまたサッとととりだし、フレキシパンごと冷凍庫にしまったのを
「おー!」っとみんなで感心して、感嘆の声を上げました。
「先生、これって高いんですか?」
誰かの質問に、先生は、鼻高々で「そうね、ちょっと値段はするけどね」と、おっしゃっていた記憶があります。
あとになって、フレキシパンには特殊なガラス繊維が組み込まれていて、それでこんなふうに自由自在に使えるというのを知ったのですが、先生に見せてもらっ た、ベラベラのゴムのような素材は、なんでオーブンに入れても平気なのか、不思議で仕方ありませんでした。

型離れがよくて、冷凍庫からオーブンまで、使える!
そして、スポッと焼いた生地がぬけるから、バターを型にぬらなくていい。
これはまさに、画期的なものすごい大発明でした。

そんなフレキシパンが欲しくて、あれこれ物色していたのですが、「どうしても、これがなきゃ!」という目的がないため、売っているのをみても、「う〜ん、 これなら、普通の型でできるしな…」と思いなおす事、数回。要は、ただちょっと目新しいものを使ってみたい、これだけだったのです。
ちょっと高いのもネックでした。

そんなある日、私にもチャンスがめぐってきました。
今はもう日本になくなってしまった、ウイリアムズ・ソノマで、セールをやっていたのです。
なにげなく店内を物色していたら、「!」あったんです。セール品の中にフレキシパンが。
手にとってみると、以前から欲しかった黒いベコベコのゴムの感触で、裏に白くMade in France FLEXIPAN と、書いてあるマフィン型でした。
「きゃあ〜欲しい!これ買おう!」
値段もすごく安くなっていたので、私は喜んでこれを買いました。

そして、いそいで家に帰って、ウキウキと、マフィンを作り、バターを型にぬらなくてもパッととれる感動を味わい大興奮!
ただ、家族にこの気持ちを伝えようとしても、私以外、誰もお菓子を作らないので、感動をわかってもらえなかったような…
このあと、長方形のフィナンシエの型、円、小さいクグロフ、楕円、ハート型と、フレキシパンは、だんだん手元に増えていきました。

やわらかめの焼菓子の生地で、紙を敷かないと、くっついてしまうようなものを焼く。

ハート型は、バレンタイン時期にガトーショコラ、フロマージュブランを使った、ハートのクレーム・ダンジュ、そして、秋には、りんご小さくカットして、フ レキシパンに詰め込み、焼いて、そのままフレキシパンごと冷凍庫で眠らせておき、必要な分だけとりだして、型からりんごを抜き、パイ生地を底に敷いて完成 するタルトタタンは、店頭に出せば、すぐになくなってしまうかわいさでした。

このフレキシパン、値段もこのところ比較的安くなってきていますし、なかなか使い勝手もよいです。

ただ、ひとつ難点をあげるとすれば、この万能フレキシパン、家庭用の電気オーブンでは、焼き色が今ひとつ、つきにくいのです。
火は通っていても、色が白っぽく上がってしまうのです。
もちろんガトーショコラのような色のはいった生地なら全然問題ないのですが…