■ 花屋のKちゃん

une fleuriste à Paris
マドレーヌ広場の近く、スルディエール通りにある、シックなお花屋さん、「ヴェルテューヌ」

静かな店内に入ると、「ボンジュール!」と、囁くように声をかけられ、ドキドキしながら、「あの、Kはいますか?」と聞いてみる。

すると、ちょっとしてから、奥から流暢なフランス語で「ボンジュール!」と、前髪パッツン、アメリ風の、Kちゃんが現れる。

「Kちゃん!」
「わあ!みどりさんやないの!」

たぶん、10年ぶりだ。
懐かしさで、時間が18年前に戻った気持ちになる。

私がパリを去るとき、Kちゃんは、まだ花屋さんに正式採用されてなくて、労働許可証待ちの状態だった。それが、今ではこの花屋さんに欠かすことのできない人になっている。

「元気やった?」
「うん!なんとかやってるよ!」
ギュッと私の手を握ったKちゃんの手は、冷たくて、指先が真っ赤になっていて、お花屋さんの手になっていた。

私も、少しは、パティシエの手になったのかなあ。

Kちゃんが、同僚のフランス人に「友達が日本から来たんだよ」と言って、お互い、「ボンジュール」と、ご挨拶。

そして、しばしの間、機関銃のように、ふたりでしゃべる。

「素敵なお店だねえ。きれいなお花だねえ。」
気分はまるで田舎から出てきたおっかさんみたい。
「みどりさん、お花、買わんでいいからね。ここは高いからね」と、Kちゃん。
相変わらず、歯に衣着せぬKちゃんの口っぷりが、パリで生きてる人の強さを感じさせる。

パリで働くって決して楽じゃない。かなりタフで、そして、その仕事を愛していなければ10何年間続けていくなんて無理だ。
花が好きでパリにやってきたKちゃん、その荒れた手の冷たさが、自分の仕事に対するプライドに思えて、気持ちが膨らんできた。

ありがとね、Kちゃん!またいつか、パリで会いましょう。


Vertumne
   12, rue Sourdière
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