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| ■ ジェーン・バーキンのビストロ |
| déjeuner avec Jane Birkin |
| お昼頃、「オ・ボン・マルシェ」の、「ラ・グランド・エピスリー・ド・パリ」に行くことになった。もちろん、お菓子だとか、紅茶だとか、ジャムだとか、そんなものを探しに行くのが目的だ。 ボン・マルシェのあるセーヴル街と並行に走るようにシェルシュ・ミディ街が伸びていて、小さなビストロが軒を並べているはずだから、早速、ルベのガイドブックを開いてみる。 確かに店はいろいろとあるのだが、著者のルベが、ある日の昼食で、ジェーン・バーキンとその息子のルー・ドワイヨンと隣席になった、と書いている店に、私は注目してみた。もしかしたら、今日、ジェーン・バーキンと一緒に食事ができるかもしれない・・・。 「よし、ここに決めた!ここにしよう!」 と、私は、妻の返事も待たずに、「ミディ・ヴァン」に向かったのである。 ちょっと覗いてみた感じでは、狭い店かと思っていたら、実は、奥の方は広くなっている。 一番奥の、窓際の席に誘導されると、お兄さんがすぐに黒板を持ってきて、隣の椅子に立てかけてくれた。「今日のムニュ」というやつである。アントレとメイン、そして、デセールまでで、21ユーロ。3つの中から、アントレとメインだけ、か、メインとデセールだけ、なら、18ユーロ。こういう組み合わせ方を「フォルミュール」といって、ランチでは、よく見られるようになった。 ![]() どうせだから、ムニュにして、妻は、「スモークサーモンのミニュット」と「豚のスペアリブの蜂蜜風味」を、私は、「豚の腎臓」と、「マグロのブロシェット」に決める。 「OK!、じゃあ、飲み物はどうする?」 愛想のいいお兄さんが尋ねてくれる。もちろん、飲むのである、ワインを。昼間だろうが、何だろうが、飲むのである。 「ワイン、ドゥミ・ピシェはありますか・・・?」 ピシェというのは、ピッチャーのこと。ピシェで飲むハウスワインが何しろ一番安い。こんな気軽なビストロ、しかも、昼食である。ピシェが一番だ。ドゥミとは、半分量のこと。 「ピシェはないんだよ。でも、ドゥミ、持ってくるよ。で、どうしよう、ボトルを開けるけど、それでいい?」 「でも、半分でいいんですけど・・・。」 「わかってる、わかってる。半分だけ飲んで残してくれればいいから。シノンでいいかい?」 お兄さんは、小粋にウィンクをすると、カウンターの方へ消えていった。 何だかわかりにくいことをするな、と思っていたら、お兄さんが、確かに真新しいボトルを持ってやってきた。 「シノン、これで、いいよね。」 そして、コルクを開け、そのまま、テーブルに置いていった。 しばし、ワインを見つめる妻。 「一本じゃん、これ。一本だよ。」 攻めるような視線で私を見る。 「だから、半分くらいまで飲んでやめればいいって、言っていたじゃない。」 「一本分、お金、とられるんじゃないの?」 「いや、ぼくは、あのお兄さんを信じる。」 「でも、どうやって、半分、って、わかるの?」 「それは・・・まあ、だいたいわかる・・・としか言いようがない・・・。」 アントレが運ばれてくる頃には、他のテーブルもほとんど埋まり始めていた。残念ながら、ジェーン・バーキンの姿はなく、隣には、年配の夫婦が腰をかけ、私たちと同じ、シノンを飲んでいる。 やがて、メイン・ディッシュ。 私の頼んだ、マグロのブロシェットよりも、妻の豚のスペアリブが気になる。一口、分けてもらったが、蜂蜜の甘さが何とも言えず、おいしい。 気がつくと、ワインも、そろそろ半分に減りかけている。 「もう、半分以上、飲んでいるんじゃない?」 「いや、大丈夫、ボトルの上の方はくびれているから、そう見えるだけ。」 デセールは、ミルティーユのタルトとオレンジのサラダ。 ![]() 会計を頼んだ。 お兄さんが来て、ワインのボトルを手に取った。私は、すかさず、「半分だよ。」というようなジェスチャーをしてみせる。お兄さんも、苦笑して、「わかった、わかった!」と、目くばせしている。 果たして、ワインは、ちょうどボトル半分の値段だった。 「ほら、大丈夫だったでしょ?」 そう言うと、妻は、「・・・うん、本当だ・・・。」と、何だか、まだ納得のいかない様子だ。 ルベの本にはこう書いてある。 「この店を訪れた日、ジェーン・バーキンと、その息子ルー・ドワイヨンが、私たちの隣で昼食をとっていたが、店内に流れているFMラジオについては、彼女たちはうるさく思わなかったようだ。私たちには、邪魔だったが!」 そういえば、FMがかかっていたような気がするが、それほど気にはならなかった。もしかしたら、このガイドブックを見て、音量に気を使ったのかもしれない。 「さて、行きますか。」 私たちは、店の外へ出て、「オ・ボン・マルシェ」へと向かった。 ■ Midi vins 83, rue du Cherche-Midi 75006 Paris tél 01,45.48.33.71 日曜・月曜休み |
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