京都シトロン滞在記   ---------------------------------------------
                                   une semaine au Citron
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        le premier jour
とっこちゃんを訪ねること
2008年1月、京都に行きました。
目的は、京都で「シトロン」という、かわいい小さなお菓子カフェをやっている、友達のとっこちゃんを訪ねること。

京都に行くのは20年ぶり。少し緊張しながら京都駅に降り立つと、もうそこに、とっこちゃんが迎えにきてくれていました。

「みどりさん、わざわざすみません」
「いえいえー、こちらこそ、よろしくお願いします」
照れながら挨拶をして、早速、とっこちゃんが運転する車に乗せてもらって、目指すはシトロン。

途中で、とっこちゃんが、「みどりさん、清水寺でも見て行きますか?」と言ってくれました。
ぶんぶん首を振って、「ううん。いいの。清水寺より、早くシトロンが見たい!」と騒ぐ私。
「お昼食べましたか?」
「ううん、でもいらないよ。これからすぐに、なんか作るから!」

車で走ること10分、「みどりさん、シトロンですよー」と、とっこちゃん。
「わあ!かわいい!」
待ちに待った、これがとっこちゃんのシトロンか...。

シトロン、一言で言えば、一度も行ったことないけど、何度も来たことがあるような場所。
掲載された雑誌や、写真では、何度も見たことがありましたが、実際に見るのは初めてのはずなのに。
白いカフェ。ぬくもりのある壁や木のテーブル。シェルフにのったかわいい焼菓子たちと、ショーケースに並んだシュークリームや、ロールケーキ。
隅々までとっこちゃんの心配りがいき届いた、やさしい空間。なんて懐かしいんだろう!
「うわあぁ〜かわいいーかわいいーよ、とっこちゃん」と、うっとり。
そんな私を現実に呼び戻すように、とっこちゃんが手まねきして、
「みどりさん、こっちです。早くこっちに入ってください」
「あ、はいはい。今行きます」
呼ばれて、あわてて、とっこちゃんがいる、シトロンの教室に入っていきました。

京都に私が来た理由。
それは、とっこちゃんが今度始める2号店のお手伝い。
話は去年の11月に、さかのぼります。
加藤旅館での出来事
とっこちゃんが東京に来たとき、いつも我が家は、紅茶グマ焼菓子工房から、加藤旅館に変身します。そうです。加藤家は、とっこちゃんの定宿です。
たまに、時間があれば、どこかに食事に行ったりすることもあるけれど、だいたいは時間がないので、せっかく東京に来ているのに、どこにも連れてってあげられなくて申し訳ないと思いつつ、私が作ったものを食べてもらうことになってしまいます。

そして、去年、ボジョレー解禁の頃、とっこちゃんが東京に来ました。
せっかくだから、ボジョレーを飲もうよ!と、とっこちゃんに提案して、仲良しの、Very berryお菓子教室のくにちゃんも誘って、3人で飲みましょう、ということになり、ボジョレーのワインだけを用意しました。
後は、仕事にかまけて、適当にチーズと焼き鳥でも買って…と、ほとんど何も準備をしてなかったのです。

そうしたら、その日、くにちゃんが、いつもに増して、すごくかわいい格好していたので、
「どしたの、くにちゃん、今日すごくカワイイ格好!」と言うと、
「だってさ、今日、ボジョレーのパーティーだもん」と、ニコニコしています。
「え?パーティー?そのかわいいカッコは今夜のため?」
「ウフフ」と、くにちゃん。
そして、とっこちゃんもくにちゃんも、いろいろなお惣菜を買ってくれていたことが発覚し、私ったら、誘っといて、チーズと酒だけって、どうよ?と焦る焦る。

「みなさん、ちょっと大久保のスーパーに行ってみない?」
「スーパー?」
「そう、スーパー。楽しいよ〜行こうよ!」
ふたりを言葉巧みに誘導して、近所のスーパーに連れていき、ちょこちょこと簡単にできそうなものを調達して、料理。
作ったものは、砂肝のサラダと、シュークルト、それに買ってもらったお惣菜を合わせて、その夜はなんとか、面目を保って、楽しいボジョレーパーティーの夜になりました。

翌日、とっこちゃんは珍しくお休みだったので、私の仕事を手伝ってくれていました。
律儀なとっこちゃんは、いつも、泊まりに来て、時間があったら、
「みどりさん、なんか手伝いますか?」と、私の仕事を手伝ってくれます。
いつものように仕事をしながら、シトロンの2号店の話になりました。
シトロンの2号店は、なんと4階建てのビル。それがまるまるシトロンになります。
お菓子はもちろんだけど、ほかにお惣菜も売るし、昼間はランチ、夜は食事も楽しめる素敵なダイニングになる…という夢のような話でした。

「1階はお惣菜とお菓子、2階3階はイートインスペース、4階はお菓子教室なの?すごいすごい!とっこちゃん、すごいじゃん!」
本当にすごいとしか言いようがなくて、大興奮した私は、ただ感嘆符を並べて、はしゃぎまくっていました。
でも、ハッと気づけば、とっこちゃんは黙っています。
あんまり、うれしそうじゃありません。
「2号店で出すメニューとか、もう決まってるの?」
「いや…まだです」
「そうなの…どんなもの出したいの?」
それまで、うつむき気味に話していたとっこちゃんが、すっと私の顔を見つめて、真顔で言いました。
「かとうみどりさんが私に、いつも、作ってくれてるようなものが出したいです。」
「へ?私が作ってるもの?どんなもの?」
「昨日作ってくれた、砂肝のサラダやシュークルトや、クスクスや…あんなんを作って出したいんです」
驚いて、本当に驚いて、とっこちゃんの顔を、しばしの間、まじまじと見つめました。
とっこちゃんの目は、まだ笑っていませんでした。
ただ、黙って、真っ直ぐ私を見つめていました。


とっこちゃんは、今まで、私に対して、決して無理な頼みごとをしたことがありません。
今回も、私に何種類か簡単に料理の作り方を聞いて、それぐらいできれば…その程度に思っていたに違いありません。
私が「ふうん。じゃ、がんばってね!」と、ひとこと言っていたら、「はい。ありがとうございます。がんばります。」と、それ以上はなにも言わずに、笑顔で、そのまま京都に帰っていったと思います。
そういうとこ、すごくツボで、グッとくるわけです。
たぶん、映画の「卒業」で、ダスティン・ホフマンが演じるベンジャミンが、結婚式の最中に、花婿からキャサリン・ロスを奪い去っていったぐらいの感じで、叫びはしなかったけど、はっきり言っておりました。

「わかった。私にできることがあったら、なんでもやるよ。」

そして、年が明けたら、京都に行って、2号店開店に向けてのメニューの開発の手伝いをすると約束をして、とっこちゃんは、少しだけ元気になって、京都に戻っていきました。それから、とっこちゃんも私も、それぞれ怒涛のクリスマスに突入して、それ以後2007年は、お互いほとんど連絡もとらず、約2か月がたって、私は、約束通り、京都のシトロンにドキドキしながら、やってきました。

そして店に着いて、5分で、手を洗い、エプロンをして、私たちはメニューの試作作業にとりかかりました。
le deuxième jour
みどり、自転車に乗る。

翌日の朝、みんなで買い物に行くことになり、私はほとんど3年ぶりぐらいで自転車に乗せられました。しかもママチャリじゃなくて、おしゃれな、荷台がついてない自転車。こういうの、すごく苦手です。だって、めちゃくちゃ座高が高い!

「やだよーこわいよー。とっこちゃんと、きぃちゃん、ふたりだけで、自転車に乗りなよー。私はふたりの横を走るからさ!」
「アホなこと言わんといてください。さ、みどりさん、行きますよ!」
半ば強制的に自転車を渡され、どんくさい私は、ものすごいおっかなびっくり自転車に乗りました。そして、ふたりについて、サドルをぶるぶるふるわせながら、なんとか京都の街を走っていきました。
本当にあのときは怖かったです…

買い物を済ませて、再びシトロンに戻り、作業開始。
となったのですが…
その日は、ひっきりなしに、電話があったり、お客様がいらしたり、と、とっこちゃんは超多忙で、なかなか作業を進めることができません。
こんなんで、考えていたものすべてが完成できるのか?と、不安もありましたが、とりあえず、目の前にあるものを形にしていくことが先決と、こちらはこちらで試作を進めていきました。

その日は、ピサラディエールという、塩気のある練りパイ、ブリゼ生地の上に、じっくりと長い時間炒めて飴色になった玉ねぎをソースのように敷き、トマトとナスを並べて焼いたニース風のピザみどり風や、フランスでは白いんげん豆を使って作る、手間のかからない作りやすいレンズ豆を使って作った、うちのムッシュの大好物、フランスの煮豆料理カスレみどり風、濃厚なクリームとマッシュルールソースの豚肉のエスカロップみどり風、などを作りました。

一日に平均して7、8種類の試作をして、最終的にとっこちゃんに味をみてもらい、材料や配合を決め、盛りつけを決め、とっこちゃんがデジカメで撮影して、作り方と配合を書き写して、完成です。
今回、とっこちゃんから、作り方が知りたい、とリクエストがあったもの、自分でこんなものはどう?と、提案して作ったもの、ほとんどが、普段自分で家で作って食べているものばかりなので、そんなに手に入りにくい材料もなく、お手伝いに来てくれていた2号店スタッフのきぃちゃんが、
「おいしいです!これ、なんですか?なんでできてるんですか?」
「え?これで、こんなんできるんですか?」と、一品一品、試食のたびに新鮮に驚いてくれて、ちょっとうれしかったです。
きぃちゃんは、とってもほめ上手さんだね。簡単だから、お家でも作ってみてね。
le troisième jour
奈良のラ・カシェット

私の携帯電話にメッセージが残っていて、聞いてみたら、奈良でフレンチレストラン「ラ・カシェット」をやっている、吉岡夫妻からでした。
年末、私が師と仰いでいる埼玉のビストロ「メゾン・ドゥ・アーシュ」の百武シェフに、今回の京都滞在を話したら、それを吉岡夫妻に話したらしく、「遊びにおいで!」と連絡をくれたのでした。

このふたり。
フランスに住んでいた頃、料理もお菓子も全く興味がなかった私の目を開かせてくれて、フランス料理とお菓子、両方の素晴らしさを教えてくれた、大切な友人です。
ご主人の方はパリの三ツ星レストランで修業経験もあり、吉岡シェフに最初に会った当時、料理もお菓子も全然知らない素人の、私の素朴な質問を、馬鹿にもせずに、いつもいつも丁寧に聞いて教えてくれました。
フランスの食材の素晴らしさを教えてくれたのも、吉岡シェフです。
そして、奥さんの暁子さんは、私がお菓子を作るきっかけになったチーズケーキを教えてくれた、本当に恩人です。

とっこちゃんに、このふたりの話をすると、忙しいのに、ぜひそこに行ってみましょうよ、と言ってくれました。
そしてふたりで、なんとか作業を終わらせて、奈良にでかけていきました。

初めて訪れたラ・カシェットは、趣味のいいマダムのセンスが活かされた、気品があってそれでいて仰々しくない落ち着いた店構え。
料理は、お皿の上のひとつひとつが、シェフの作り上げてきた思いがあふれていて、どれひとつとして妥協のないものばかり。それでいて、とても優しく、季節感があふれていました。
言葉じゃなくても、アーティストなら、作品で人に感動を与えることができる。
言葉じゃなくても、キュイジニエなら、作った料理一口で、人を感動させることができるんだね。
それは、どんなに長い時間、話をするよりも、雄弁であったり、勇気づけられたりすることが、あるんだよね。

私もいつか、この吉岡シェフや、埼玉の百武シェフ、そしてイルプルーの弓田シェフや石丸館の石丸シェフのように、自分で作ったもので、誰かにエナジーを与えることが、できるようになれるのかな。
なれるかどうかは、かなり怪しいけれど、「なりたい!」とだけは、ずっと思っていなければいけないよね。と、ちょっとひとり、羊肉を口に放り込みながら、鼻息も荒く、エモーショナルな瞬間がありました。

シェフとマダムは、パリにいた頃の私をよく知っているので、今の私が、お菓子を作ったり、料理をしたりしているという事実が、まるっきりピンとこないらしく、いまだに
「あんた、ホンマにちゃんとやってんの?」と、疑問符つきで、おかしそうに聞きます。
そうだよね。フランス時代から、ずっと私はごご馳走になるばっかりで、ふたりに何もご馳走できなかったもんね。
吉岡ムッシュ、マダム、おいしい思い出をいつもありがとう。ごちそうさまでした。
また、シェフの好きな焼き菓子を送るからね。
ラ・カシェット la Cachette
奈良市西登美ケ丘5-3-5
0742-45-2339

(写真の料理は、ラ・カシェットのものではありません)
le quatrième jour
結局は人間なんだ。

4日目は早朝から車で、大阪にある厨房機器のショールームに行って、みんなでレクチャーを受けました。

大きなスチームオーブンや、性能のいい冷凍冷蔵庫。
めくるめく、新しい機械の性能の素晴らしさに、夢が広がって、一同感嘆の嵐でした。
私が個人的に強く魅かれたのは、食品を脱気をして、真空調理ができる機械。
「これってどうやって使うんですか?」と、ショールームのスタッフの方を質問攻めにしてしまいました。
「みどりさん、脱気の機械の説明だけは、真剣に聞いてましたね」と、とっこちゃん。
「ねー、いいねーあれ、欲しいねー」でも、うちには置く場所なんてないしなーと、あれこれ考えながら、とっこちゃんと、きいちゃんが、真剣にいろいろな、他の機械の使い方の説明を聞いている間、広々としたショールームの厨房で、試作のために準備してきた野菜を洗ったり切ったり、シュー生地を作ったり、ピザ生地を焼いたり、食洗機をまわしたり。
いろいろな機械を実際に、使わせてもらったけど、どんな素晴らしい機械でも、味を確かめるのは私たち。結局は人間が料理やお菓子を作っていて、オーブンも冷凍冷蔵庫もしっかりと手助けをしてくれる道具にすぎないんだなと。手を抜くことはできないんだと。
気がついたら、外はもう真っ暗になっていました。
とっこちゃん、連れてってくれてありがとう。わくわく楽しい1日でした。

le cinqième jour
イル・ネージュ・シュル・ル・シトロン。

朝、とっこちゃんは用事があったので、私は少し先に、シトロンへひとりで出かけていきました。

店に近づいていくと、今回私たちの手伝いをしてくれているシトロン2号店スタッフのきいちゃんが、なぜか店の前に立っています。
「どうしたの?お店に入らないの?」と、聞くと、
「おはようございます。みどりさん、雪です!」と、きいちゃん。
「はい。そうですね」
その朝、京都は雪でした。
灰色の空から落ちてくる、小さな雪。
「見てください。雪の結晶が、きれいにそのまま降ってきてるんです! 手にそのままのっかって、めっちゃかわいい!」
きいちゃんは、空を見上げて、白い息を吐きながら、楽しそうに大きく手を広げていました。
 
「あたしからみたら、雪よりも、きいちゃんの方が、めっちゃかわいいけどな」と、内心思いつつ、汚れちまった悲しい心の持ち主の私は、落ちてくる真白な雪の美しさよりも、冬の寒さに震えながら、きいちゃんを残して、とっととシトロンに入りました。

この日まで、とっこシェフと私は、40種類近いメニューを完成させていました。
ひとつの料理を作る、そこから発展させて、他のものを作るということもよくあって、ダンブラードと言う、魚のタラとジャガイモを使った簡単な一皿を作ったのですが、とっこちゃんがそれを試食して、「みどりさん、これに、シュー生地混ぜて、揚げてみていいですか?」と、にっこり。
食べてみると、びっくりするおいしさでした。
「なんじゃこりゃ?いけるね!」
「これは、これですよ」とっこちゃんが差出した本は、ドゥニ・リュッフェル氏のトレトゥールの本。アクラという、本当にダンブラードとパータ・シューを混ぜて揚げたフランス領のアンティル諸島の料理がのっていました。
「なるほどー」
とっこちゃんは、このアクラが気に入って、二日も連続で作っていました。
「2回作るの?」
「はい。もう1回食べたいんです!」なんてことも多々ありました。

私がお勧めなのが、豚肉のカシス煮。
じっくり煮込んだ豚肉に、カシスの酸味がものすごくあうんです。
これはもともと、私が師と仰いでいる百武シェフのお店に行った時に、出してもらって、感激して、自分なりに作ってみたものです。
紅茶グマスタッフ、シトロンスタッフのみなさんにも、大好評でした。
ご飯ものは、とっこちゃんが得意なほうれん草とひき肉のカレー。そしてフランス人のお友達から私が習って、ご飯ものにアレンジしたブッシェ・ア・ラ・レーヌ。とっこちゃんが、気にいって毎晩温め直して食べていたビーフストロガノフ。

このほかにも、とっこちゃんは、ほたて貝のラヴィゴット・ソース、スパゲッティー・カチャトーレ、ミートボールのトマトソース煮込み、鶏ささ身とインゲンのツナソースサラダ、鯖のクリーム煮込みなどなど。
そして、ラタトゥイユ、チキンのレモン煮、ブッフ・ブルギニヨン、クスクス、ロールキャベツ、ムサカ、エトセトラ、エトセトラ。
作って作って作り続けました。

le sixième jour
本領発揮
試作6日目のとっこちゃんは、本領発揮。
例えれば、水を得た魚、いや油を得たエビとでも言いましょうか、
1日中、香ばしい匂いをさせながら、何かを揚げていました。

とっこちゃんのお父様とお母様は、ずっとずっと串カツ屋さんをなさっていました。
最初にこの串カツ屋さんの写真をとっこちゃんに見せてもらったときには、「ここどこ?お寺?」と聞いてしまったくらい、歴史を感じられる、素敵なお店でした。
とっこちゃんも、お父さんとお母さんのお店があった間は、ずっとずっと、シトロンのお教室と掛け持ちで、串カツ屋さんを手伝っていました。
なので、ものすごく揚げ物が上手、いや、そんなことを言ったら、もしかして失礼かも…
揚げ物のプロです。

「せやから、私、油の量がめっちゃ少なくても、ちゃんと揚げることができるんですよ」
と、ちょっと誇らしげなとっこちゃん。
「…えっとね、じゃあね、あたしはね!あたしはね!チョコレート200gでも、テンパリングができるよ!」と、変な対抗心を燃やして言ってみても、むなしい。
とっこちゃんの揚げ物と比べると、私のチョコテンパリングなんて、足元にも及ばない凄い技なのでした。

この日は、とっこちゃんときぃちゃん、エビのフリッターに始まり、コロッケをいろんなフレーバーで作っていて、見るだけで、もう、辛抱たまらんと叫びたくなるくらい、すごくおいしそうでした。
ほかほかのコロッケの中には、スタンダードな肉が入っていたり、タラマが入っていたり、オリーブのタップナードが入っていたり。家庭の味からお総菜屋さんの味、はたまたレストランの味まで、入れるものによっていろんな味に変わっていきます。
「う〜ん、コロッケって、無限の可能性があるんだね!」
「ほんま、おいしいですよね」
ホカホカのコロッケを、ハフハフ言いながら頬張ると、なんとも言えず、幸せな気分になります。しかも揚げ具合も絶妙。

なんでも、とっこちゃんのお父さん直伝の秘伝の調合油、黄金レシピがあるそうで、それで揚げると、本当になんでもが、めちゃくちゃおいしいそうです。
「だから、私は、油にはうるさいんです」と、とっこちゃん。
シトロン2号店で出来上がる、フリッターやコロッケ、とっても楽しみです。
きっと、とっこちゃんのお父様とお母様も、とても楽しみになさっていることでしょう。

le septième jour
いよいよ、京都シトロンメニュー試作、最終日となりました。
なんだか、あっと言う間に過ぎてしまって、
「え〜もう終わり?」なんだか寂しい。
最終日も、手をゆるめることなく、作り続けて、なんとかあの日、シトロン2号店で、作りたいものリストに書いてあった、すべてのものを、とっこちゃんと私ときぃちゃんの3人で、完成させることができました。

最初、京都に来る直前に、とっこちゃんからメールがきて、
「みどりさん、すみません。実は忙しくて、試作が、ほとんどできてないんです。」という、衝撃の告白を読んだ私は、真っ青になり、本当に全部作ることができるのか???と、
かなり悲壮感を漂わせて、京都に降り立ったのですが、全然心配することはなかったね。
料理も、本当に自分が普段作っているようなもんで、みんなが納得してくれるのか?と、すごく不安だったけど、それも今回大丈夫…だったようです。

私は料理に関して、プロではないですし、知らないこともたくさんあります。
ただ、料理をすることが大好きだし、食べたものを再現するのも得意です。

お正月に実家に戻ったとき、私の母が、娘たちに、
「あんたたちのお母さんは小さい頃、1回歌を聞いたら、そのまますぐに、ピアノで弾けたんよ」と、変な娘自慢をしていて、
「今はもう、それ、ちゃんとできんよ」と、母と娘に言ったら、
それを聞いたムッシュが、「でも、今はみどりさん、どんな料理でも、1回食べたら、ほとんど同じ味を再現することができるんですよ」と、これまた妙な嫁自慢?をしていました。

ピアノももう、弾けなくなったし、料理も、どこかで食べたものを1度は作れるけど、その後、時間がたってから、また作って、と言われても、「なにそれ?そんなん作ったっけ?」と、すぐに忘れてしまっていて、実際はほとんど役に立たってないのですが、今回、改めて料理と向き合う機会をいただけて、紅茶グマの教室に通ってくれている生徒さんに、いくら言われても、なかなか自信が持てなかったのが、こんなんでも、みなさん喜んでくれるのかなと、少し思えるようになってきました。
そのうちお料理の教室なども、機会があれば開催してみたいです。

とっこちゃんが、かとうみどりの作ってる家のご飯を、2号店で出したい。と、言ってくれた時は、本当にうれしかったのです。ありがとね。
考えてみれば、たぶん、もしあの時、私が手伝うよと言わなかったとしても、きっととっこちゃんは、自分でいろんなメニューを作りだしていける人なんだよね。

たぶん、今回私たちが作ったフレンチ惣菜を、とっこちゃんやきぃちゃんが、いろいろ試行錯誤して作っていって、また発展させたり、改良したりして、「紅茶グマみどり味」から「シトロンとっこ味」に少しずつ変わっていくことでしょう。
それをまた、心から楽しみにしています。
こんな素敵な機会を与えてくれて、とっこちゃん、本当にありがとうございました。
一週間、早朝から深夜まで、料理を作っていられるなんて、ものすごく幸せでした。
それも、大好きなとっこちゃんと一緒に。
私たちは同じイル・プルー・シュル・ラ・セーヌのお菓子と出会って、同じようにお菓子の勉強を始めたんだよね。
そしてそれぞれ、お菓子を作ることを生業にして、ここまできました。
でも、やりたいことも、やれることも、それぞれ私たちは違います。
違っているから、時にはそれが、とても眩しかったり、励みになったり。

この7日間は、あまりがんばらない私から、人の何倍もがんばってるあなたへの、はなむけ。
精一杯の贈り物です。

どうか、みなさまも、京都の新しいシトロンへ、出かけて、とっこの肩をたたいてやって、とっこの揚げ物や加藤家の夕飯のおかずを、どんなものか、食べてやってください。
ここに載せていない料理も、まだまだたくさんあります。
シトロンのエモーショナルなメッセージが、料理にも、お菓子にも、きっとたくさんたくさん詰まっているはずです。
よろしくお願いいたします。